春菊との和解

無断転載禁止 春菊との和解

春菊

野菜の価格高騰が発端

その日私は野菜、特に緑色の野菜に飢えていた。

このところの野菜の価格高騰でまともに野菜を食べていなかった。
仕事を終え、閉店間際のスーパーに駆け込む。
が、野菜はほとんどない。
あっても小さくしなびていて、いかにも売れ残りといったようなものばかり。

苦手なままの春菊

手ぶらで帰るのも癪なので何かないものかと店内をうろついていると春菊に目が止まった。
多少しなびてはいるが、ボリュームはあるし、なによりかなりはっきりした緑。

「でもなあ、春菊か。。。」

春菊は数少ない苦手な野菜の1つだ。

小さい頃、それが鍋に入っているといつもがっかりしていた。
あの独特の香りと苦味だけでも十分嫌なのに、
強靭な繊維のせいでむりやり飲み込むこともできない。

あまり人気がなかったのか、
いつの間にか実家の鍋で春菊を見かけることもなくなり、
私は春菊が苦手なまま大きくなった。

とりあえず買って帰ることに

そういうわけで春菊など買う気はなかったのだが、
唐突に春菊のサラダというのを思い出した。
それは最近読んだ本に書いてあったものだ。
「ほろ苦くて柔らかい」
「これが春菊の隠していた秘密だったのか」
といったことが書かれており、
そんなに絶賛するほどなのかと気になっていたのだ。
試してみるか?でもこの量、まずかったら辛すぎるだろ。。

でも他に買うものあるか?

ええい、ままよ!

といった感じで結局買って帰ることにした。

サラダに変わった、春菊

帰って早速サラダを作る。
春菊は少ししなびていたので、
洗った後水の中で茎を切り落として、
生け花のごとくしばらく水を吸わせる。

シャキッとしてきたら葉っぱだけをちぎりとって皿に盛る。
レシピでは生ハムを散らすようだったが、
そんなものはないのでしらすを。

最後にオリーブオイルを回しかけて完成。
あまり考えもせず買ってきた春菊の半分をサラダにしたところ、
結構な量になってしまった。

そして春菊を実食

いざ、実食。
箸で掴んで持ち上げるが、生のままの春菊は意外と葉が大きい。
誰が見ているわけでもないので豪快に口に入れる。

。。。おいしい!

驚いた。
あの苦手だったはずの香りと苦味にこんなに惹きつけられる日が来ようとは。
大人になって苦いものが食べられるようになったのもあるだろうが、
生の春菊のしっとりとした歯ざわりが、
あの独特の香りと苦味となんとも絶妙に合う。

今まで食べてきた春菊をすべてサラダにしてやり直したいくらい、おいしい。
一気に食べてしまった。

苦手と好きになる間で

苦手なものでもいつ好きになるかわからないものだ。
それ以来1週間ほど、2日に1回は春菊のサラダを食べている。
春菊も決して安くはない。
早く野菜安くならないかな。

参考文献
忙しい日でも、おなかは空く。