生まれて初めての写経体験

無断転載禁止 生まれて初めての写経体験

はじめに

私の母が写経体験に参加すると聞き、面白そうだと思い一緒に参加してきました。
会場は都営地下鉄三田線の西巣鴨駅に位置する、大正大学。仏教系の大学と聞くと、私は駒澤大学を思い浮かべますが、調べてみると、大正大学以外にも大谷大学、龍谷大学、高野山大学、立正大学などがあるそうです。今回のイベントは、写経体験以外にも、腕輪念珠づくりや、匂い香づくり、写仏体験、坐禅止観がありました。どれも一度は体験してみたいと思いました。

大学内の様子


立派な造りの正門が印象的でした(正門の全体が写る写真は撮り忘れました、、)。学内には、三大悲劇詩人の一人であるアイスキュロスの詩や、ファッションショー、ワークショップの掲示などがありました。


ギリシア悲劇の作品は読んだことがないので、読んでみようかなと思ったり。また、仏教にファッションのイメージがあまりないので、そういったイベントが開催されていることに少々驚きましたが、仏教系以外の学部もあり、その学部の催しのようですね。日曜日で、学生がほとんどいなかったからかもしれませんが、なんだか心が落ち着くキャンパスという印象を受けました。

そもそも写経とは?

写経体験が開催されている教室に入り、時間になると、最初にお坊さんから、写経とは何かというお話がありました。簡潔に言えば、文字通りお経を紙に写すこと。古代では、そうすることで功徳が得られるとして、信仰の行為として行われ、当時は印刷技術など当然ないので、写経によってお経が広まっていったとのこと。現代では般若心経を写経することが多いそうです。プログラミング学習においても、ソースコードを書き写すことを写経と言ったりしますよね。

いざ体験

今回は般若心経ではなく、山家学生式というお経を写経しました。写真1枚目が読み下し文(漢文を日本語に訳したもの)で、2枚目が実際に写経をする原文です。私は今回の体験で初めて、このお経を知りましたが、天台宗の開祖である最澄によって書かれたそうです。また、お坊さんから、アフガニスタンやパキスタンで人道・復興支援に尽力し、2019年に凶弾に倒れた中村哲医師が、山家学生式の冒頭部分に登場する「一隅を照らす」という言葉を好んでいたというお話がありました。「一隅を照らす」という言葉の解釈は様々なものがあると思いますが、「社会の一隅にいながら、社会を照らす生活をする」といった意味があるそうです。まさに、中村哲医師の生き方を象徴する言葉ですね。


そして、写経を実際にする前に、お坊さんから、1分間目を閉じて深呼吸しましょうという、ご指示。写経は心を落ち着かせ、一文字一文字ゆっくり丁寧に書くものだそうなので、その準備ですね。深呼吸を終えると、筆ペンを持ち、黙々と書き始めました。体験時間は1時間でしたが、無我夢中で書いていたので、あっという間に時間は過ぎました。

体験を終えて


かなり集中して、ゆっくり丁寧に書いたのと、もう普段はペンで文字を書く習慣がないのもあってか、たった1時間で全身がグッタリしました。ただ、同時に心が落ち着くのも感じました。無我夢中という言葉の通り、そこに我は出てこないので、煩悩から解放されるんですかね。というか煩悩も仏教用語なんですね。左上のあたりに「為」とありますが、ここには願い事を書くそうです。私はここ最近、胃が弱っているので、「健康第一」と書いてみました。

また、写経を経て、今年の初めに書き初めをしたことを思い出しました。こちらも母に勧められてやってみたのですが、確かにあの時も無我夢中で書いていたような。写経に限らず、自分の好きな言葉、美しい響きがする言葉を、デジタルツールではなく、直接ペンや筆で紙に書くことも、新鮮で心の健康に良いのかもしれません。「明鏡止水」の鏡の字のバランスが悪いのが悔やまれます、、

おわりに

現代ではデジタルデトックスという言葉があるように、デジタルツールによって、煩悩に悩まされる方が少なくないと思います。勿論、現代でスマホやパソコン無しに生活するのは難しいですし、私は普段、会計時はPayPayなどのスマホ決済や、クレジットカードしか基本的に使わないこともあり、便利な時代になったなぁと感じることも多いです。PayPayの送金機能は素晴らしいですよね。大人数で居酒屋や旅行に行った時などの会計時に起きる、現金であの人にいくら渡して、あの人からいくら貰って、あ、細かいのないから崩さなきゃ、、、といったやり取りを解消してくれます。

とはいえ、やはり私もデジタルツールやSNSの使い方、付き合い方に悩むこともあるので、そういった時は、写経でなくても(普段から写経をするのは中々難しいですし)、読書や運動などを行い、デジタルツールから一度離れ、心を落ち着かせることが大事なのかなと思いました。これから年に一度くらいは、写経してみようかなと思います。行ってみて、とても良かったです。

お母様、お坊さん方、大正大学の皆様、有り難うございました。